出会いのきっかけっていろいろあるらしいけれど、俺が彼女と知り合ったと言うのか、出会ったのはある意味では偶然ではなかったのかも知れない。何故かって言えば、俺たち同じ趣味を持つ連中が集まっている無名のサークルに、友人が連れてきたからだ。俺たちのサークルはちょっと変わっていて、自分の好きな事と言うのか趣味と言うのか、ようするに何でもいいから自分の得意なことを人に披露してお互いに面白がる、と言う変な連中の集まりなのだ。
ある集会開催の時に、友人が見知らぬ一人の女性を連れて現れた。俺はてっきり友人の彼女だと思ったのだが、新たに入会したいと言う女性だった。
彼女はさほど目立つ容姿をしているわけではなかったが、楚々として、清潔感がある、爽やかな感じの女性だった。
新人さんが入会するには、その時に集まっている八割以上の挙手がないと駄目、と言うルールがあるのだが、彼女はあっさりとそれをクリアーして入会を認められた。
そして、俺と同じような趣向があることを知ったのだった。その趣向と言うのは“料理”だ。
俺は高校にいかずに板前になりたかったのだが、親父に騙されて大学まで進み、今は卒業後大学に残り“空気力学”を研究している身だ。その一方では、小学校から続けている剣道も六段の域に達していると言う、ちょっと変わった男なのだ。
さらには、夢であった板前のまねごとを趣味でやっている。そして、彼女も寿司職人を目指したが、家族の大反対にあい、脆くもその夢は閉ざされてしまい、大学を出た後現在は雑誌社の総務部人事課に勤務していると言う。やはり趣味で寿司職人のまねごとを、休日に家族を相手にやっていると言う、よく似た経歴を持っている女性だ。
俺たちはすぐに意気投合して、様々な事を話しあうようになった。
ある日サークルの活動が終わり、みんなで食事と言う名目の飲み会で、俺と彼女は日本料理について話しをした。俺は寿司は日本料理の一部にすぎないから、もっと幅広く料理を見渡した方が良いと提案したところ、彼女は普通の板前が理想的な寿司を握ることはできないと言う。
売り言葉に書い言葉で俺は「それなら今度お互い、相手の分野で勝負してみよう」と言うことを申し入れたら、彼女はちょっと悩んだがOKを出した。
周りの連中が、それならば食材のテーマを決めて、それぞれが寿司と寿司ではない日本料理にしてみたら面白いだろう、と言う話しになり、俺も彼女もOKせざるを得なくなったのだ。勝負はあっけなく、俺が負けた。俺の握った寿司は、形こそ良いのだが口の中でほぐれずに、寿司型のお握りに刺身をくっつけただけと言う判定をほぼ全員から出されたからだ。
しかし、彼女が造った料理も見てくれは良いが味は今一つで、俺の寿司がひどかったから勝ったと言うことを全員に言われたのだった。
こうして俺たちは、お互いの持っているものを伝えうようになり、これが交際の発端になったのだった。
こうして今はいつ結婚するか、と言うタイミングだけが問題になっている理想的なカップルになったのだ。友人が取り持つ縁かもしれない。
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